この日の事はよく覚えている。
天候は良くなかったが、三輪山の夜明けに間に合うように、早い時間から車を走らせた。
現地に着くと、予想通り曇天で、今にも大粒の雨が降りそうだった。
予め決めておいた場所から三輪山を見るとほとんど雲で見えない。
そして雨になった。
頭の中には、美しい朝焼けの中の三輪山を描いていたため、別の日に出直そうと思い引き返し始めたが、ふと下調べで、三輪山を歌った万葉集の中に、雲が登場していた歌があった事を思い出した。
資料として車に積んでいた万葉集のコピーを見てみた。
三輪山を しかも隠すか 雲だにも 情あらなも 隠さふべしや
額田王(ぬかたのおほきみ)
解釈は資料により違うが、
この地から離れるため、三輪山を見れるのもこれで最後なのに、雲で隠れて三輪山が見えない。
雲はなんと無情なのか・・・。といった感じだ。
この人もカメラマンだったのかも知れない。
とすれば、今日はその情景の日である。
雨の降る中、撮影ポイントに戻った。
1時間ほどすると、雨が止み雲が流れ始め、麓から山が見え始めた。
三輪山( 北緯34度32分6秒)。
撮影は、2006年12月。